今回はそんなジンの話。

ジンとは、おもに大麦や小麦、ライ麦、トウモロコシなどの原料を糖化・発酵させ、蒸溜してできた純度の高いスピリッツに、ジュニパーベリーをはじめとしたボタニカルの風味をプラスして再蒸溜したお酒です。

元々、薬用酒として売られていたジン

というのも古くからジュニパーベーリーには強壮などの薬効成分があると信じられていて、1112世紀ごろのイタリアではすでにジュニパーベリーとぶどう酒を合わせて蒸溜するレシピがあった、という説も。また1314世紀ごろのネーデルラントでは、ジュニパーベリー入りのぶどう酒や蒸溜酒を「イェネーフェル」と呼び、利尿や健胃、解熱、強壮などに役立つ薬酒として医師や薬局が常備していたともいわれています。

さらに時代が進んで17世紀の半ば、オランダの博士が、植民地の熱病対策として、ジュニパーベリーをアルコールに浸漬し、蒸溜した薬用酒を開発。利尿・解熱に効果を発揮する「ジュニエーブル」や「ジュネヴァ」の名で広まっていきますが、味や香りの良さから薬効だけでなく嗜好品としての評判も高かったようです。

そして1689年、イギリスの名誉革命によってウィリアム三世がオランダから迎えられ、メアリー二世とともに英国国王になると、ジュネヴァもロンドンで爆発的に流行。名前もいつしかジュネヴァを短縮した「ジン」に変わっていきました。

19世紀になって高性能な連続式蒸溜機が登場すると、それまで重厚なグレーンスピリッツに砂糖を加えた甘口のお酒だったジンに代わり、雑味のない辛口のジンが造られるようになります。新タイプのジンはおもな生産地の名を取って「ロンドンドライジン」と呼ばれ、国外への輸出も始まりました。

アメリカに渡った英国風のドライジンは、19世紀末ごろからカクテルのベースとして広く人気を集め、現在のような世界的なスピリッツへと成長していきました。

ジンというお酒はよく「オランダで生まれ、イギリスで洗練され、アメリカが栄光をあたえた」と評されますが、それにはこのような歴史的背景があったのです。


本日もマティーニやギムレット等美味しいカクテルをお作りしております。